M&Aアドバイザリーファームの選考フローは、「書類選考→適性検査→複数回の面接→最終面接・オファー」という流れを軸にしつつ、会社、採用区分、サービスライン、職位によってケース、ジョブ、グループディスカッション、英語確認などが加わると考えるのが実務的です。
「M&Aアドバイザリーなら必ず面接3回」「必ずケース面接がある」と一律には言えません。2026年8月31日時点で確認できるPwCアドバイザリーのM&A・戦略コンサルタント職の新卒選考では、エントリーシート、Web適性検査、グループディスカッション、個人面接、ジョブ選考、人事面接という複数段階のフローが公表されています。一方、中途採用は募集職種ごとに登録資格が示されるため、応募先の最新案内を確認する必要があります。
そのため転職準備では、面接回数を暗記するより、どの段階で何を確認されても対応できる状態を作ることが重要です。
M&Aアドバイザリーの選考は「専門性」と「案件遂行力」を段階的に確認する
M&Aアドバイザリーの仕事は、単なる財務分析ではありません。案件によって、戦略、財務・会計、バリュエーション、デューデリジェンス、交渉、PMI、事業再生など複数の専門領域が関わります。
選考でも、知識だけでなく「クライアントの重要な意思決定を支える仕事を任せられるか」が見られます。
大まかには次のように整理できます。
| 選考段階 | 主に確認されやすいこと | 準備のポイント |
|---|---|---|
| 書類選考 | 経歴と募集ポジションの接続 | 案件名ではなく担当工程・役割・成果を書く |
| 適性検査等 | 基礎能力、性格特性など | 案内された形式を確認し直前対策に偏らない |
| 初期面接 | 志望理由、転職理由、基礎的な専門性 | なぜM&A、なぜアドバイザリー、なぜその会社かを分ける |
| 実務面接 | 財務・会計、案件経験、問題解決、コミュニケーション | 自分が何を判断し、誰と調整したかを具体化する |
| ケース・課題・ジョブ | 論点整理、分析、アウトプット、対話力 | 正解当てより前提確認と考え方の説明を重視する |
| 最終面接 | 組織との相性、入社意思、職位期待値 | 入社後に担える領域と伸ばしたい領域を整理する |
これは固定の順番ではありません。実際の案内を正本として準備してください。
Step1:書類選考では「M&Aに近い経験」を工程単位で見せる
職務経歴書で弱くなりやすいのは、所属企業や肩書だけでM&A適性を伝えようとする書き方です。
たとえば「事業会社の経営企画5年」だけでは、何がM&Aアドバイザリーに接続するのか分かりません。
以下のように分解します。
- 事業計画・中期経営計画の策定
- 買収候補の市場・競合分析
- 財務モデル作成
- バリュエーション
- デューデリジェンスの取りまとめ
- 社内投資委員会・経営会議への説明
- 弁護士、会計士、金融機関との調整
- 契約交渉やクロージング支援
- 買収後のPMIやKPI管理
監査法人出身者なら会計論点だけ、投資銀行出身者なら執行経験だけ、コンサル出身者なら戦略だけを並べるのではなく、応募ポジションで再現できる部分を明示するのがポイントです。
一般的なM&A業界全体の選考を確認したい場合は、M&Aの選考フローもあわせて確認すると、仲介・投資銀行・アドバイザリーの違いを整理しやすくなります。
Step2:初期面接では志望動機を3階層に分ける
M&Aアドバイザリーの面接で「M&Aに興味があります」だけでは弱くなります。
志望動機は次の3階層で用意します。
1. なぜM&Aなのか
企業価値向上、事業再編、成長投資、事業承継など、企業の重要な意思決定に関わりたい理由を自分の経験とつなげます。
2. なぜアドバイザリーなのか
事業会社の当事者、投資家、仲介、投資銀行などではなく、専門家としてクライアントの意思決定と取引実行を支援したい理由を説明します。
3. なぜそのファーム・チームなのか
同じFASでも、コーポレートファイナンス、トランザクションサービス、バリュエーション、PMI、再生、戦略など担当領域は異なります。
「有名だから」ではなく、応募チームのサービスと自分の経験の接点まで落とします。
Step3:実務面接は「担当したこと」と「理解していること」を分けて話す
M&A選考では専門用語を知っているだけでは不十分です。一方、経験していない工程を経験済みのように話すのは危険です。
案件説明では、次の6点をセットにします。
- 案件の目的
- 自分の役割
- 担当した分析・作業
- 難しかった論点
- 自分が行った判断・調整
- 結果と学び
たとえばDDで一部の分析だけ担当したなら、「案件全体をリードした」と広げず、担当範囲を明確にしたうえで、隣接工程をどこまで理解しているかを説明します。
面接対策をさらに具体化したい場合は、案件での役割・成果・論点を職務経歴書から逆算し、面接で深掘りされても事実で説明できるよう準備します。
ケース面接は必ずあるのか
必ずあるとは限りません。
PwCアドバイザリーのM&A・戦略コンサルタント職では、新卒ルートでグループディスカッションやジョブ選考を含むフローが公表されています。選考形式は採用区分や募集職種によって変わるため、応募先の最新案内を確認してください。
つまり「M&Aアドバイザリー=必ず特定形式のケース面接」と決めつけず、応募先から案内された選考形式を確認する必要があります。
ただし、ケースがなくても面接の中で、
- ある会社を買収するなら何を見るか
- 企業価値が変わる要因は何か
- 売上が落ちている会社の論点をどう整理するか
- DDで重大な問題が出たらどう考えるか
- 買収後にシナジーが出ない場合は何を確認するか
など、思考プロセスを確認する質問は準備しておくとよいでしょう。
バックグラウンド別に準備すべき論点は違う
監査法人・会計士
会計知識は強みですが、「正しい会計処理を確認する人」から「取引判断を支える人」へ視点を広げます。
- 正常収益力の見方
- BS上のリスク
- 運転資本
- ネットデット
- 会計論点が価格・契約へ与える影響
まで考えられると、アドバイザリーとの接続が明確になります。
投資銀行・証券
案件執行経験を、単なる件数ではなく役割で説明します。
- オリジネーション
- バリュエーション
- 資料作成
- 経営陣とのコミュニケーション
- 入札・交渉
- クロージング
のどこを自分が担ったかを整理します。
戦略・総合コンサル
市場分析や戦略策定だけでなく、ディール固有の論点へ接続します。
- 投資仮説
- 商業DD
- シナジー
- PMI
- 事業ポートフォリオ
など、M&Aの意思決定と実行にどう活かせるかを示します。
事業会社
M&A専任でなくても、経営企画、財務、事業開発、子会社管理などから接続できる場合があります。
特に、経営陣への説明、予算、投資判断、社外専門家との協働、PMIなどを具体化します。
最終面接では「何を学びたいか」より「何を任せられるか」を語る
若手では成長意欲も重要ですが、中途採用では入社後の再現性がより重視されます。
「M&Aを学びたい」だけでなく、
- 財務DD経験を即戦力として活かせる
- 業界知見を案件発掘・分析に使える
- クロスボーダー案件で英語実務を活かせる
- PM経験を複数関係者の進行管理に転用できる
など、会社側が採用する理由を言語化します。
また、面接は候補者がファームを見極める場でもあります。職務範囲、期待される役割、配属チーム、案件タイプ、評価基準など、自分が入社判断に必要な点を質問できるよう準備しておきましょう。
内定前に確認したい5項目
M&Aアドバイザリーは同じ会社でもチームによって仕事が変わります。オファー前後では最低限、次を確認します。
- 配属予定チームと主なサービス
- 職位と期待される役割
- 案件の入り方と担当工程
- 国内案件・クロスボーダー案件の比率や英語使用場面
- 入社後に不足スキルを補う方法
労働環境やカルチャーまで含めて比較する場合は、M&Aアドバイザリーの評判も参照すると、選考通過後の判断材料を増やせます。
よくある質問
M&Aアドバイザリーの面接は何回ですか?
会社・職種・採用区分で異なります。複数回面接を行う企業はありますが、固定回数として断定はできません。応募先の最新案内を確認してください。
ケース面接はありますか?
職種によって異なります。課題、適性検査、グループディスカッション、ジョブ選考など別形式が使われる場合もあるため、ケースだけに対策を寄せないことが大切です。
財務モデリングのテストは必須ですか?
必須とは限りません。コーポレートファイナンスやバリュエーションなど応募領域によって確認方法が変わるため、募集要項と選考案内を確認してください。
資格がないと不利ですか?
資格の有無だけで決まるとは限りません。応募領域に必要な専門性、案件経験、論理的思考、コミュニケーションを含めて評価されます。募集要項で資格が必須・歓迎のどちらに位置づけられているかを確認してください。
まとめ:選考回数を覚えるより、各段階で再現性を示せる準備をする
M&Aアドバイザリーの選考フローには共通する骨格がありますが、会社やサービスラインごとに課題、適性検査、面接回数、ジョブ選考などが変わります。
準備の中心は、「自分の経験のどこがM&Aアドバイザリー業務で再現できるか」を案件単位で説明できるようにすることです。
応募先ごとの選考形式や、現在の経験で狙いやすいFAS・M&Aアドバイザリーポジションを整理したい場合は、コトラの転職支援サービスで専門コンサルタントに相談できます。非公開求人を含む選択肢と、企業ごとの選考準備を確認したうえで応募先を絞ると効率的です。