M&Aアドバイザリーで必要な英語力は、「M&Aなら一律にTOEIC○点」と決まっているわけではありません。 国内案件中心なら英語を必須としないポジションもありますが、クロスボーダー案件では英文資料の読解だけでなく、海外の売り手・買い手、現地アドバイザー、弁護士、会計士との会議・メール・交渉を進められる実務力が重要になります。
2026年9月2日時点で確認できるコトラ掲載求人を見ると、クロスボーダー担当でTOEIC860点以上を求めるメガバンク、TOEIC800点以上を「望ましい」とする大手証券のM&Aアドバイザリー、業務の大半が英語で行われTOEIC900点を目安とする外資系投資銀行など、要求水準には幅があります。
したがって転職準備では、スコアだけを見るのではなく、応募先で英語を「何のために、誰と、どの頻度で使うか」まで確認することが重要です。
英語力は「案件の国際度」で3段階に考える
M&Aアドバイザリーの英語力は、次の3タイプに分けると判断しやすくなります。
| ポジションのタイプ | 英語使用のイメージ | 転職時に確認したいこと |
|---|---|---|
| 国内案件中心 | 海外資料の確認、英文メールが時々発生 | 英語は必須か歓迎か |
| クロスボーダー併用 | 海外チームとの会議、英文資料、DD・交渉 | TOEIC目安と会話レベル |
| 外資・クロスボーダー中心 | 会議・資料・交渉の多くが英語 | 実務で英語を主言語として使えるか |
PwCのM&A Advisoryは、クロスボーダーM&AではPwC Globalの専門家と連携しながら案件をリードすると説明しています。買収対象の探索、取引ストラクチャー、バリュエーション、デューデリジェンス、条件交渉など、M&Aの主要工程そのものが国境をまたぐため、英語は単なる「語学資格」ではなく案件遂行ツールになります。
現行求人から見るTOEICの目安は800〜900点台まで幅がある
英語要件を具体的に見ると、同じM&Aアドバイザリーでも差があります。
TOEIC800点以上が「望ましい」求人
日系大手証券会社のM&Aアドバイザリー求人では、国内・クロスボーダーM&Aのエグゼキューションを担当し、英語はTOEIC800点以上が望ましい、かつ「英語の電話会議でメモが取れるレベル」とされています。
ここで重要なのは、スコアだけではなく「電話会議で情報を落とさず記録できる」という業務場面まで示されていることです。
TOEIC860点以上を求める求人
メガバンクのM&Aアドバイザリー求人では、クロスボーダー担当にTOEIC860点以上の英語力を求めています。国内担当とクロスボーダー担当で要件が分かれているため、「M&Aアドバイザリー全体の基準」ではなく、国際案件を担う職種の要件として理解すべきです。
TOEIC900点を目安とする外資系求人
外資系投資銀行のM&Aアドバイザリー求人では、ビジネスレベル以上の英語力を必須とし、業務のほとんどが英語で行われるためTOEIC最低900点が目安とされています。
一方、別のクロスボーダーM&A求人では「ビジネス上級レベルの英語力」を求め、具体的なTOEIC点数を置いていません。
つまり、TOEICは応募可否を判断する一つの指標にはなりますが、最終的に見られるのは案件を英語で進められるかです。
実務で必要なのは「読む・書く・聞く・話す」の4技能ではなく5場面
M&Aで英語を使う場面は、英会話スクールの4技能より具体的です。
1. 英文資料を短時間で読む
対象会社の会社概要、事業計画、財務情報、契約関連資料、業界レポート、海外企業の開示資料などを読みます。
すべてを日本語へ訳すのではなく、論点になりそうな箇所を素早く特定する力が必要です。
2. メールで論点と依頼事項を明確に書く
M&Aは関係者が多いため、英語メールでも「何を確認したいのか」「誰がいつまでに対応するのか」を曖昧にしないことが重要です。
華麗な表現より、短く正確な文章を書く能力が役立ちます。
3. 海外チームの会議を理解してメモを残す
英語会議では、聞き取るだけでなく、会議後にタスクや論点を正しく整理できなければなりません。
大手証券の求人で「英語の電話会議でメモが取れるレベル」と具体化されているのは、この実務を反映しています。
4. 自分の分析を英語で説明する
アナリスト・アソシエイトでも、バリュエーション、財務分析、デューデリジェンスの論点を海外メンバーへ説明する場面があります。
数字を見せれば通じるわけではなく、「なぜこの前提を置いたか」「何がリスクか」を言葉で説明できる必要があります。
5. シニアになるほど交渉・ファシリテーションが重要になる
マネージャー、VP、ディレクターなど職位が上がると、クライアントや海外アドバイザーとの会議を進行し、対立する論点を整理し、条件交渉を支える比重が増えます。
同じTOEIC900点でも、資料読解中心の人と交渉を主導できる人では市場価値が異なります。
TOEICが高ければクロスボーダーM&Aへ転職できるわけではない
英語力は重要ですが、M&Aの専門性を代替するものではありません。
クロスボーダー案件でも、採用側が見たいのは、
- 財務諸表を読める
- バリュエーションを理解している
- DDの論点を整理できる
- 案件進行を管理できる
- クライアントや専門家と調整できる
- そのうえで英語でも遂行できる
という組み合わせです。
実際、現在の大手証券M&A求人では英語に加えてM&AのFA経験、DCFやCompsモデル、会社法・税務・会計の基礎知識などを求めています。
したがって「TOEIC900点を取ってからM&Aを勉強する」より、M&A実務と英語実務を並行して積む方が転職では強くなります。
逆に、英語スコアが足りなくても国内M&Aから始められる場合がある
クロスボーダー案件を将来目指していても、最初から英語必須ポジションだけへ応募する必要はありません。
M&Aアドバイザリーには、国内FA、オリジネーション、財務DD、バリュエーション、PMIなど複数の入口があります。国内案件中心でM&Aの基礎を作り、入社後に英語を強化してクロスボーダー案件へ広げるキャリアも考えられます。
PwCアドバイザリーの中途採用情報でも、専門研修に加えて英語プログラムや海外研修、グローバルモビリティ制度を案内しています。これは「英語が不要」という意味ではありませんが、入社後の能力開発機会を確認する材料になります。
転職前に英語力を自己診断する5問
TOEICの点数だけで判断せず、次を試してください。
- 海外企業の決算資料を30分で読み、重要な論点を日本語で3つ説明できるか
- 30分の英語会議を聞き、決定事項とToDoを整理できるか
- 自分が作ったDCFの主要前提を英語で5分説明できるか
- DDで見つかった問題を海外メンバーへメールで簡潔に確認できるか
- 相手の主張に対し、その場で確認質問を返せるか
1〜2が難しければ、まず読解・リスニングを重点的に強化します。3〜5が難しければ、M&A用語を覚えるだけでなく、実際の案件説明を英語で練習する方が効果的です。
面接で英語力を聞かれたときの答え方
「TOEIC850点です」だけでは、仕事で使えるか分かりません。
英語経験は次の順で説明すると具体的です。
場面 → 相手 → 自分の役割 → 成果
例えば、
海外子会社の買収検討で、現地CFOとの週次会議、英文財務資料の確認、外部会計士とのQ&A整理を担当しました。会議後は論点を日本側の経営企画へ共有し、DDの追加確認項目を取りまとめました。
のように話せれば、スコア以上に実務能力が伝わります。
M&Aアドバイザリーの選考全体を先に把握したい場合は、M&Aアドバイザリーの選考フローも確認しておきましょう。面接での質問整理は、M&Aアドバイザリーの評判が参考になります。
応募先に確認したい英語関連の6項目
「英語を使いますか」だけでは実態が分かりません。面接やエージェント経由で、次を確認するとミスマッチを減らせます。
- クロスボーダー案件の比率
- 英語を使う工程(ソーシング、DD、交渉、PMIなど)
- 海外チームとの会議頻度
- 資料・メール・会議のどれが英語中心か
- 入社時に求める英語レベル
- 入社後の語学研修・海外アサイン機会
「クロスボーダー案件あり」という求人でも、実際には英語資料の読み書きが中心の場合と、海外クライアントとの折衝を直接担う場合があります。
よくある質問
M&AアドバイザリーはTOEIC何点あれば転職できますか?
業界共通の基準はありません。現行求人では800点以上が望ましい例、860点以上を求める例、外資系で900点を目安とする例があります。応募先の求人要件を正本として確認してください。
TOEIC900点ならクロスボーダー案件を担当できますか?
スコアだけでは判断できません。会議、メール、資料作成、交渉などを英語で行う実務力に加え、M&A・財務・会計の専門性が必要です。
英語が苦手ならM&Aアドバイザリーを諦めるべきですか?
国内案件中心のポジションや、英語を歓迎要件とする求人もあります。まずM&A実務を積みながら英語を強化するルートも選択肢です。
海外留学や駐在経験は必須ですか?
必須とは限りません。求人によっては海外駐在経験を評価する一方、TOEICやビジネス英語力を基準とするケースもあります。経験の有無より、実務で英語を使えることを具体的に示すことが重要です。
まとめ|M&Aアドバイザリーの英語力は「点数」より案件遂行力で判断する
M&Aアドバイザリーに必要な英語力は、国内案件、クロスボーダー案件、外資系で大きく異なります。現在の求人でもTOEIC800点台から900点目安まで幅があり、統一基準はありません。
転職時は、TOEICの数字と、英文資料を読む・会議を理解する・分析を説明する・交渉する能力を分けて棚卸しすることが重要です。
自分のM&A経験と英語力の組み合わせで、どの程度のクロスボーダーポジションを狙えるか判断しづらい場合は、コトラの転職支援サービスでM&A・FAS領域に詳しいコンサルタントへ相談し、現在の経験で応募可能なポジションを確認してみてください。