FAS(Financial Advisory Services)の将来性は、「M&A件数が増えるか」だけでは判断できません。2026年時点では、M&Aそのものに加え、デューデリジェンス、PMI、事業再生、バリューアップ、カーブアウト、IT・AI、フォレンジックまで支援領域が広がっています。
経済産業省は2026年6月、日本企業が関連するM&Aの件数・金額が2024年、2025年と2年連続で増加したと説明しています。グローバルでもPwCは、2025年のディール金額が前年比36%増加した一方、件数は1%増にとどまり、メガディールが金額を押し上げたと分析しています。
つまり市場は一様ではありません。大型案件とそれ以外で動きが分かれているため、FASの将来性を単純な「M&A市場の拡大」だけで説明するのは不十分です。FASで長く価値を出すには、単純な案件数ではなく「どの局面の専門性を持つか」が重要です。
FASの仕事は「DDだけ」ではなくなっている
FASというと財務デューデリジェンスをイメージしがちですが、現在の大手FAS各社のサービス・採用を見ると範囲は広いです。
KPMG FASは経験者採用で、Corporate Finance、Transaction Services、Turnaround & Restructuring、Forensic、Strategy、Financial Services、AI Transformationなど複数部門を募集しています。
PwCアドバイザリーは、M&A後の価値創造を重視し、従来のリスク把握型DDだけでなく、案件成立後の戦略・オペレーション・組織再構築まで見据える必要性を説明しています。
EYもM&Aデューデリジェンスで、財務、税務、ビジネス、法務、オペレーション、人事・年金、IT、サイバーセキュリティ、カーブアウトなど複数領域を扱い、取引後のPMIやValue Creationまで支援しています。
つまりFASの将来性は、M&Aの前後へ仕事が広がっていることにあります。
今後も需要が生まれやすい5つの領域
1. 財務・ビジネスDD
買収価格や投資判断の土台になるため、M&Aがある限り必要です。
ただし、単純な数値集計ではなく、正常収益力、運転資本、ネットデット、顧客・商品別の収益性など、意思決定に直結する分析力が求められます。
2. PMI・バリューアップ
案件を成立させるだけで企業価値が上がるわけではありません。
統合後の組織、KPI、IT、営業、コスト、ガバナンスをどう変えるかが重要です。PwCも、ディール後を見据えたバリュー・クリエーション型のM&Aアプローチを打ち出しています。
3. 事業再生・リストラクチャリング
KPMG FASのTurnaround & Restructuring部門では、事業の継続・売却・清算の戦略検討、私的整理・法的整理の支援などを提供しています。
景気拡大局面だけでなく、事業ポートフォリオ見直しや再生局面でも案件が生まれるため、M&A市場の波と完全に同じ動きにはなりません。
4. テクノロジー・IT DD
買収対象の価値がソフトウェア、データ、AI、サイバーセキュリティへ依存するほど、財務だけではリスクを判断できません。
今後は会計人材とIT人材が同じディールで協働する機会が増えやすい領域です。
5. AIを使ったFAS業務
AIで単純作業が効率化されれば、FAS人材の価値がなくなるわけではありません。むしろ、データから論点を発見し、経営者へ示唆を出し、取引条件へ反映する上位業務の比重が上がります。
KPMG FASがAI Transformation部門を経験者採用の一領域として掲げ、コトラでも大手FASのAIソリューションエンジニア求人が確認できることからも、FASとテクノロジーの接点は広がっています。
将来性が高い人と低くなりやすい人
将来性が高い人
- 会計数値から事業課題まで踏み込める
- 顧客へ結論を説明できる
- 複数サービスラインと協働できる
- 英語でクロスボーダー案件へ入れる
- PMIや投資後支援まで経験がある
- IT・データ・AIを業務へ使える
相対的に弱くなりやすい人
- 定型分析だけに強い
- Excel作業だけで案件全体を理解していない
- 顧客との会話を避けている
- DD後の意思決定や統合に関心がない
- 特定のツール操作だけに市場価値を依存する
資格は入口や専門知識の証明には役立ちますが、それだけで将来性が決まるわけではありません。FAS転職で評価される資格も、実務との接続を前提に検討しましょう。
未経験からFASへ入るなら、将来の出口から逆算する
FASは部門によって必要経験が違います。
- 監査経験 → 財務DD・会計アドバイザリー
- 経理・FP&A → 財務分析・PMI
- 戦略コンサル → ビジネスDD・戦略
- ITコンサル → IT DD・PMI・デジタル
- 銀行・証券 → FA・事業再生・資金調達
未経験からの入り方を整理したい場合は、FAS未経験転職の考え方も参考になります。
入社後の出口まで考えるなら、FASからの転職先・ネクストキャリアも確認し、「何を身につけるためにFASへ行くのか」を先に決めるとミスマッチを減らせます。
将来性だけで会社を選ばない
市場が伸びていても、自分が経験できる仕事が限定されていれば市場価値は伸びません。
転職時は、
- 財務DD中心か、戦略・PMIまで入れるか
- セクター特化か、幅広い業界を担当するか
- クロスボーダー案件があるか
- 若手が顧客対応へ出る時期
- AI・データ活用の実務があるか
- 部門間異動が可能か
を確認しましょう。
将来性だけでなく、自分がどの領域の経験を積めるかも重要です。転職先の選び方を整理したい場合は、FAS転職で企業を選ぶ基準もあわせて確認してください。
まとめ|FASの将来性は「M&A+周辺専門領域」の広がりにある
FASはM&A市場の影響を受けますが、仕事は財務DDだけではありません。PMI、事業再生、バリューアップ、テクノロジー、AIなどへ広がっており、複数の専門性をつなげられる人材ほど将来の選択肢を増やしやすい環境です。
今すぐ転職を決めなくても、自分の経歴ならどのFAS領域へ入りやすく、どの経験を積めば次のキャリアにつながるかを整理しておく価値があります。FAS・M&A領域での市場価値を確認したい場合は、コトラの転職支援で専門コンサルタントへ相談できます。