CTOに必要な英語力は、一律に「TOEIC○点」と決められるものではありません。英語でどの仕事を担うかによって必要レベルが変わります。
実際、国内のCTO候補求人には「ビジネスレベルの英語」を歓迎条件とするものがある一方、CTO室でグローバルメンバーとの協業を担うポジションでは、英語で会議をリードし、技術ドキュメントを作成できるレベルを求める例があります。
つまり転職で確認すべきなのは、英語テストの点数より先に、
- 海外エンジニアを直接マネジメントするのか
- 技術会議を英語で進行するのか
- 海外拠点やベンダーと交渉するのか
- 経営会議・取締役会・投資家対応で英語を使うのか
- 英文の技術文書を読むだけでよいのか
という英語を使う業務場面です。
CTOの英語力は4段階で考えると判断しやすい
レベル1|英語はほぼ使わない
国内顧客、国内エンジニア中心で、海外拠点や外国籍メンバーとの協働が少ない企業です。
この場合、CTO選考で最優先されるのは、
- 技術戦略
- アーキテクチャ
- セキュリティ
- 開発組織のマネジメント
- 採用
- 事業と技術の接続
などで、英語は加点要素にとどまる可能性があります。
2026年8月31日時点で確認できるCTO候補求人にも、英語を「必須」ではなく「歓迎」とする例があります。NAXAのCTO候補求人では、大規模プロダクト開発やエンジニアマネジメント等を必須とし、ビジネスレベルの英語は歓迎スキルに位置づけられています。
レベル2|読み書きが中心
海外の技術情報、OSS、クラウドサービス、セキュリティ情報、海外ベンダーの資料などを日常的に扱うケースです。
この場合は、会話が流暢でなくても、
- RFCや技術仕様を読む
- 英文ドキュメントから判断材料を集める
- Slackやメールで要件を説明する
- 障害報告や設計方針を文章で共有する
能力があれば仕事を進められることがあります。
「英会話が苦手だからCTOは無理」と判断する前に、自分が英文を使って技術判断できるかを確認してください。
レベル3|会議・マネジメントを英語で行う
外国籍エンジニア、海外拠点、英語話者のマネージャーと日常的に働く会社では、英語はコミュニケーション能力ではなくマネジメント能力の一部になります。
マネーフォワードのCTO室のプリンシパルエンジニア求人では、グローバルメンバーとの協業、議論のリード、技術ドキュメント作成を英語で行えるビジネスレベルを求めています。またCTO室のプロジェクトマネージャー求人でも、日本語・英語の双方でビジネス上の議論、調整、ドキュメント作成ができることを要件にしています。
このレベルでは、単に日常会話ができるだけでは足りません。
- 設計レビューで反対意見を整理する
- 1on1で評価・育成を話す
- 障害発生時に優先順位を決める
- 技術負債への投資を経営側へ説明する
- 複数拠点の責任者とロードマップを合意する
といった仕事を英語で遂行できる必要があります。
レベル4|経営・投資家・グローバル交渉まで英語で担う
海外展開する企業、グローバルSaaS、外国人比率の高い開発組織、海外投資家を持つスタートアップでは、さらに一段上の英語運用力が必要になります。
CTOは技術部門の代表として、
- ボードミーティング
- 投資家との技術デューデリジェンス
- M&A時の技術評価
- 海外パートナーとの契約交渉
- 重要顧客への技術説明
- グローバル採用
に参加する可能性があります。
ここでは「正しい英文」より、曖昧な状況で論点を整理し、経営判断を英語で前に進められるかが重要です。
TOEICはどこまで必要か
TOEICは英語力を示す一つの材料ですが、CTOに共通する絶対基準ではありません。
企業によっては明確な目安を置くケースもあります。例えばマネーフォワードCTO室のプロジェクトマネージャー求人では、TOEIC700点相当以上を一つの目安とし、基準を満たす資格がない場合は選考中に指定試験を受ける可能性があると記載しています。
しかし、これはそのポジション固有の要件です。「CTOならTOEIC700点あれば十分」「900点なければCTOになれない」と一般化してはいけません。
むしろ面接では、点数に加えて、
- 英語で会議をファシリテートした経験
- 海外エンジニアをマネジメントした経験
- 英語で設計・障害報告を書いた経験
- 海外ベンダーと条件交渉した経験
- 英語で経営陣へ技術投資を説明した経験
を具体的に話せる方が、実務との接続を示しやすくなります。
求人票で見るべき「英語」の5つの表現
CTO求人を比較するときは、単に「英語力」と書かれているかを見るだけでは不十分です。
1. 「歓迎」か「必須」か
歓迎なら、技術・経営経験が強ければ応募余地があるケースがあります。必須なら、面接でも英語使用経験を具体的に確認される前提で準備します。
2. 「ビジネスレベル」の中身
同じビジネスレベルでも、読み書き中心なのか、会議進行まで含むのかで難易度が違います。
3. 誰と英語を使うのか
- 海外エンジニア
- 海外経営陣
- 顧客
- 投資家
- ベンダー
相手によって必要な語彙と交渉力は変わります。
4. どの媒体で使うのか
Slack・メール中心なら文章力が重要です。会議・1on1中心なら即時に聞き返し、要約し、意思決定する力が必要です。
5. 日本語も同時に必要か
グローバル企業でも、日本の顧客や経営層との調整には日本語が必要なことがあります。マネーフォワードのCTO室求人のように、日本語・英語の両方をビジネスレベルで求める例もあります。
「グローバル企業だから英語必須」とも限らない
企業全体がグローバルでも、チームごとに必要言語が違う場合があります。
Mercariは採用情報で、仕事では日本語と英語の両方を使用しつつ、必要な日本語・英語レベルはポジションと業務内容によって異なると説明しています。また、言語学習や通訳・翻訳の支援も提供しています。
CTO転職でも同じで、会社名だけで英語要件を推測せず、応募ポジションの組織構成とコミュニケーション設計を確認することが重要です。
自分の英語力を「CTO実務」で判定する5問
資格スコアとは別に、次の質問で自己評価してみてください。
1. 英語でアーキテクチャの意思決定を説明できるか
「この技術が好きだから」ではなく、コスト、保守性、採用難易度、セキュリティまで説明できるかを見ます。
2. 英語で反対意見を処理できるか
CTOは説明するだけでなく、異論を聞き、論点を整理し、決定する必要があります。
3. 障害時に短く正確な指示を出せるか
インシデント対応では、流暢さより誤解を生まない指示が重要です。
4. 非技術系の経営陣へ説明できるか
技術用語を並べず、事業リスク、投資対効果、期限に変換して話せるかを確認します。
5. 英語で1on1・評価・採用ができるか
グローバルな技術組織では、英語ができても人材マネジメントができなければCTOの役割は果たせません。
英語力が足りない場合の優先順位
CTOを目指すなら、一般的な英会話を広く学ぶより、実際に使う場面から逆算して練習する方が効率的です。
読み書き中心なら
- 英文技術文書の要約
- 設計レビューコメント
- 障害報告
- 英文Slackでの合意形成
会議中心なら
- 反対意見への回答
- 論点の要約
- 決定事項の確認
- 会議終了時のアクション整理
経営・投資家対応なら
- 技術ロードマップの説明
- セキュリティリスクの説明
- 開発投資の優先順位
- 技術デューデリジェンスの想定問答
を練習します。
英語だけでなく、CTOとして要求される経験全体を確認したい場合はCTOの転職難易度も参考にしてください。
面接では「英語ができます」ではなく実例を話す
面接で英語力を聞かれたとき、
TOEICは850点です。日常会話は問題ありません。
だけでは、CTO業務で使えるか判断しにくいでしょう。
代わりに、
海外拠点のエンジニア10名と週次でアーキテクチャレビューを行い、設計上の争点を英語で整理して意思決定していました。重大障害時には英語でインシデントチャンネルを運営し、復旧後のレビューも担当しました。
のように、相手・場面・責任・成果で説明します。
英語は単独のスキルではなく、技術判断や組織マネジメントを届けるための手段として見せるのがポイントです。
英語力と働き方は分けて確認する
英語を使うグローバル組織では、海外拠点との時差や緊急対応によって勤務時間が不規則になるケースもあります。ただし、これは英語力そのものとは別の論点です。
応募時には、
- 海外拠点との定例会議の時間帯
- オンコール責任
- CTO自身が見る組織範囲
- VPoE・EM・Tech Leadとの分業
- 重大障害時のエスカレーション
まで確認しましょう。
役割負荷の見極めはCTOは激務なのかを判断するポイントも参考になります。
まとめ|CTOの英語力は「点数」より、英語で何を決められるか
CTOに必要な英語力は企業によって大きく違います。国内中心なら英語が歓迎要件にとどまる場合もあれば、グローバル開発組織では英語で会議、調整、技術文書作成まで行えることを求めるポジションもあります。
そのため、転職前に確認すべき順番は、
- 英語を使う相手
- 英語を使う業務
- 必須か歓迎か
- 資格基準の有無
- 自分の実務経験でどこまで証明できるか
です。
自分の英語力と技術・マネジメント経験で、どのCTO・CTO候補求人を狙えるか整理したい場合は、コトラの転職支援サービスで専門コンサルタントに相談し、現在の求人要件と照らし合わせてみてください。