結論から言えば、転職で年収アップを望むこと自体は不自然ではありません。ただし、志望動機を「給料が高いから」だけで終わらせるのは避けるべきです。
面接で伝える際は、年収への希望を隠して別の理由を作るのではなく、
- 今後担いたい役割
- その役割で生み出せる成果
- 成果や責任が適切に評価される環境
という順番に置き換えると、採用側にも納得されやすい説明になります。
厚生労働省の「令和7年雇用動向調査」では、2025年の転職入職者のうち、前職より賃金が「増加」した人は40.8%、「減少」した人は31.0%でした。賃金が増えた人が4割を超えた一方、減少した人も3割を超えています。この数字は「年収アップを志望動機にすればよい」という意味ではありません。
「年収を上げたい」は転職理由と志望動機を分けて考える
年収をめぐる回答で失敗しやすいのは、次の3つを一つにしてしまうことです。
- 転職理由:なぜ今の会社を離れたいのか
- 志望動機:なぜその会社・ポジションを選ぶのか
- 希望年収:転職条件としてどの水準を希望するのか
本音の転職理由に「現職では成果に対して報酬が上がりにくい」が含まれていても構いません。しかし、応募企業への志望動機は、その会社でなければ実現しにくい仕事や役割に接続する必要があります。
JAC Recruitmentも、志望動機は面接で重要な質問であり、企業側が応募者の志望度や入社後の活躍・定着可能性を確認する材料になると説明しています。
したがって、「給与が高いから応募した」だけでは、給与条件がより良い会社が現れたらまた転職するのではないかという懸念を持たれやすくなります。
年収アップを志望動機に変換する3ステップ
1. 年収ではなく「何を評価してほしいか」を言語化する
まず「年収を上げたい」の中身を分解します。
たとえば、
- 大型案件を任されているのに役割が給与へ反映されない
- マネジメント責任が増えたが等級が変わらない
- 専門性を高めても評価制度上の上限が低い
- 売上や利益への貢献が報酬と連動しにくい
という事情があるなら、本当に求めているのは「高い給与」だけではなく、責任・成果・専門性が評価される環境かもしれません。
2. 応募先で担いたい役割につなげる
次に、その希望を応募先の仕事へ接続します。
たとえば金融やコンサルティングの転職であれば、
現職では案件執行を中心に経験してきました。今後は顧客提案や案件責任まで担い、成果に対する責任範囲を広げたいと考えています。御社ではその役割に早い段階から挑戦できる点に魅力を感じています。
という形です。
ここでは「高い年収」を主語にせず、より大きな役割を担う結果として、評価や報酬も高めたいという順序にします。
3. 希望年収は別の質問として率直に答える
希望年収を聞かれたときまで曖昧にする必要はありません。
現年収、希望額、最低限の条件を整理したうえで、
現在の総年収は○○万円です。今回の役割と期待される責任を踏まえ、○○万円程度を一つの目安として考えていますが、職務内容や評価制度も含めて相談できればと考えています。
のように、条件交渉として切り分けて伝える方が自然です。
金額を示す場合は、固定給・賞与・残業代・株式報酬など何を含むかも揃えて比較します。
NG回答と改善例
NG例1:「今より年収が高いからです」
これでは企業固有の志望理由がありません。
改善例
現職では財務分析と案件推進を担当してきました。今後はより経営に近い立場で案件全体をリードし、成果に対する責任を広げたいと考えています。御社の募集ポジションではその経験を生かしながら担当領域を広げられるため、志望しました。
NG例2:「今の会社は給料が低すぎます」
現職への不満だけで終わると、転職後に何を実現したいのかが見えません。
改善例
現職で専門性を身につけることができた一方、今後は成果と役割の広がりがより明確に評価される環境で、専門性を高めたいと考えるようになりました。
NG例3:「年収は上がれば上がるほどよいです」
希望条件の根拠がないため、採用側もオファー設計をしにくくなります。
希望年収は、現年収、市場水準、自分の経験、想定される役割を踏まえて考えます。
30代では「年収」より責任範囲の説明が重要になる
30代以降のハイクラス転職では、単なるポテンシャルだけでなく、これまで何を任され、どのような成果を出したかがより重要になります。
そのため、「年収を上げたい」から話し始めるより、
- 担当した案件や事業規模
- 自分が意思決定した範囲
- マネジメント人数
- 顧客との折衝レベル
- 改善した指標や成果
を整理し、次のポジションでどこまで責任を広げたいかを説明した方が説得力が出ます。
転職理由と次の役割をつなげる際は、転職理由からキャリアパスを組み立てる方法も参考になります。
年収アップを希望する人が面接前に確認したい5項目
面接前に、次の5点を一度書き出しておくと回答がぶれにくくなります。
| 確認項目 | 自分への質問 |
|---|---|
| 現在の報酬 | 固定給・賞与を含めた現年収はいくらか |
| 不満の正体 | 金額そのものか、評価制度や役割との不一致か |
| 次に担いたい仕事 | どの責任範囲を広げたいか |
| 応募企業との接点 | その会社だから実現しやすい理由は何か |
| 希望条件 | どこまでが希望で、どこからが必須条件か |
この整理ができれば、「年収を上げたい」という本音を無理に隠さず、キャリアの方向性と一貫した説明にできます。
まとめ|年収アップは「目的」ではなくキャリアの結果として語る
年収アップを望んで転職することは珍しくありません。重要なのは、志望動機の中心を金額そのものではなく、次に担いたい役割・生み出したい成果・評価されたい専門性に置くことです。
面接では、転職理由、企業への志望動機、希望年収を分けて整理すると、本音を曲げずに説得力を高められます。
自分の経験でどの程度の役割や報酬水準を狙えるのか判断しにくい場合は、コトラの転職支援で専門領域のコンサルタントに相談し、現在の経験が市場でどのように評価されるか確認する方法もあります。