デューデリジェンス面接の頻出質問|財務DDで問われる論点と回答例

更新日: 2026/8/10

FASやM&Aアドバイザリーのデューデリジェンス(DD)職を受けるなら、面接対策は「志望動機」と「会計知識」の二本立てでは足りません。実務では、限られた資料から対象会社の収益力・キャッシュ創出力・リスクを見極め、買い手や投資家が意思決定できる形に整理する必要があります。

そのため面接でも、財務諸表を読めるか、数字の変化に仮説を置けるか、追加で何を確認するか、結論を相手に伝えられるかが重要です。

KPMG FASのTransaction Services部門は、財務DDを主要業務とし、帳簿や売上データ、対象会社へのインタビューなどから課題・リスク・改善余地を調べ、報告へまとめると説明しています。面接準備も、この実務の流れから逆算すると効率的です。

まず押さえたい「頻出質問」の6領域

企業ごとの実際の質問文は公開されていないことが多いため、「必ずこの質問が出る」と断定するのは危険です。一方、財務DDの職務内容から、準備優先度の高い論点は整理できます。

領域 想定される質問 面接官が確認したいこと
志望理由 なぜ監査・経理・IBDではなくDDか 業務理解と転職理由の一貫性
会計 BS・PL・CFのつながりを説明して 会計の基礎と数字への耐性
収益力 EBITDAをどう分析するか 一時要因と実力値を分ける力
運転資本 運転資本が増えると何が起きるか キャッシュへの理解
DD実務 どんな資料を追加で依頼するか 仮説検証と優先順位付け
経験 短納期で品質を担保した経験は プロジェクト遂行力

質問1|「なぜデューデリジェンスなのですか」

弱い回答

「M&Aに興味があり、専門性を高めたいからです」だけでは、FAS、FA、バリュエーション、PEなどにも当てはまります。

強い回答の組み立て

  1. 現職で何を経験したか
  2. その経験の中で、企業の数字を深く分析する面白さを感じた場面
  3. DDで扱いたい論点
  4. 将来どのようなM&A人材になりたいか

例えば監査経験者なら、「監査で財務情報の正確性を見る経験を積んだ。今後は取引目的で正常収益力や運転資本、ネットデットなどを分析し、意思決定に近い場所で価値を出したい」という流れなら、DDとの接続が明確です。

FAS全体の面接準備も確認したい場合は、FAS面接の対策もあわせて整理しておくとよいでしょう。

質問2|「EBITDAはなぜそのまま使えないことがありますか」

財務DDでは、会計上の数値をそのまま受け取らず、持続可能な収益力を考える場面があります。

回答では、例えば次の観点を挙げます。

  • 一過性の売上・費用
  • オーナー企業特有の関連当事者取引
  • 通常水準と異なる役員報酬
  • 災害・訴訟・移転などの特殊要因
  • 会計方針や計上タイミングの影響

ポイントは「調整項目を暗記すること」ではなく、その項目が買収後も続くのかを説明できることです。

面接で「売上が伸びているのにEBITDAが悪化しています。何を見ますか」と聞かれたら、単価、数量、商品ミックス、粗利率、人件費、外注費、販促費、一時費用などへ分解します。そこから追加資料を提案できれば、分析の筋道が伝わります。

質問3|「運転資本が増えるとキャッシュフローはどうなりますか」

売掛金や棚卸資産が増え、買掛金等で相殺されなければ、通常はキャッシュが拘束されます。

ただし面接では一段深く、なぜ増えたかまで考えます。

  • 売上成長に伴う正常な増加か
  • 回収サイトが悪化していないか
  • 滞留在庫が増えていないか
  • 仕入条件が変わっていないか
  • 季節性による一時的な増加か

M&Aではクロージング時の運転資本水準が価格調整に関係することもあるため、月次推移や季節性を確認する姿勢まで示せると、実務への理解が伝わります。

質問4|「対象会社の利益が急増しています。何を確認しますか」

この質問は、結論よりも仮説の幅が重要です。

まず売上側とコスト側へ分けます。

売上側

  • 値上げ
  • 数量増
  • 新規顧客
  • 大口顧客への集中
  • 一時的な案件
  • M&Aによる連結範囲変化

コスト側

  • 原価率改善
  • 人員構成変化
  • 外注費減少
  • 費用計上時期
  • 補助金等

そのうえで「月次PL、顧客別・商品別売上、粗利、契約、受注残、主要費用の明細を確認します」と追加DDへつなげます。

EYもM&A DDについて、財務・税務・商業・オペレーション・IT・サイバーなど複数領域から取引価値のドライバーとリスクを確認すると説明しています。財務だけで説明できない変化があれば、他領域との連携を想定することも大切です。

質問5|「限られた期間で、どこから調べますか」

DDは情報量が多いため、全部を同じ深さで見るのではなく重要論点を絞ります。

回答例は次のように組み立てられます。

最初に案件の目的と買い手が重視する論点を確認します。そのうえで、売上・粗利・EBITDA・運転資本・ネットデットのトレンドを俯瞰し、変動が大きい項目に仮説を置きます。重要性と取引価格への影響で優先順位を付け、必要資料と経営陣への質問を追加します。

「とにかく全勘定を確認します」より、案件目的に沿って優先順位を付ける回答がDDらしい考え方です。

質問6|「厳しい期限で品質を守った経験を教えてください」

財務知識だけでなく、実務の進め方も見られます。STARだけで終わらせず、DDで再現できる形へ変換します。

  • Situation:決算、監査、案件など短納期だった背景
  • Task:自分の責任範囲
  • Action:論点整理、優先順位、レビュー、関係者調整
  • Result:期限・品質・改善結果
  • Transfer:DDでもどう再現するか

特に「自分一人で頑張った」より、上司・他部署・クライアントから必要情報を引き出した経験のほうが、DDのチームワークと接続しやすいでしょう。

未経験者は何を聞かれたら危ないか

未経験者がつまずきやすいのは、難しいM&A用語より、基礎を曖昧にしたまま志望動機だけを作ることです。

最低限、次は自分の言葉で説明できるようにします。

  • 3表のつながり
  • EBITDAと営業利益の違い
  • 運転資本
  • ネットデット
  • 一過性損益
  • 売上・粗利の分解
  • 買収価格に影響する主要リスク

資格は知識の証明になりますが、資格名だけで面接を通過できるわけではありません。M&A関連資格の考え方も参考にしつつ、資格知識をケース回答へ落とし込むことが重要です。

面接前日に使えるチェックリスト

  • 応募チームが財務DD・ビジネスDD・IT DDのどこを担うか確認した
  • 過去のM&A案件を2〜3件調べた
  • 3表を口頭で説明できる
  • EBITDAの調整例を3つ言える
  • 運転資本増減の意味を説明できる
  • 自分の職歴からDDに転用できる経験を3件用意した
  • 「追加で何を確認するか」を言う練習をした
  • 逆質問でチームの案件構成・育成・専門領域を確認する準備をした

クロスボーダー案件を志望するなら、英語力の評価もポジションで変わります。M&Aアドバイザリーで求められる英語力も事前に確認しておくと、準備範囲を決めやすくなります。

まとめ|質問を暗記せず「数字→仮説→追加DD→結論」で答える

デューデリジェンス面接の対策では、質問集を丸暗記するより、財務数値を見たときに何が起きているか仮説を置き、何を追加確認し、投資判断へどう影響するかを話せることが重要です。

すでに面接日が決まっているなら、応募先のサービスラインと自分の経歴を照らし合わせ、優先して潰す論点を絞りましょう。FAS・M&Aの非公開求人を含め、現在の選択肢や選考対策を確認したい場合は、コトラの転職支援へ登録して専門コンサルタントへ相談できます。

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