VC・キャピタリストの選考で落ちる理由は、企業が不採用理由を一覧で公開しているわけではないため、「これが原因だった」と外部から断定することはできません。
ただし、VC各社が公開している仕事内容や求める人物像を見ると、選考で評価がずれやすいポイントはかなり具体的に逆算できます。
特に注意したいのは、キャピタリストを「スタートアップを見る仕事」「財務分析をする仕事」と狭く理解することです。JAFCOは、投資先開拓、投資実行、バリューアップ、EXITまでを一気通貫で担当する仕事として説明しています。つまり選考でも、分析力だけでなく、案件を見つける力、起業家と関係を築く力、意思決定する力、投資後に伴走する力まで見られ得ます。
先に結論|不採用理由は断定できない。「VC業務との接続」を点検する
候補者側では強みだと思っている経験でも、応募先が公開する仕事内容や人物像との接続が見えなければ、強みが伝わりにくくなります。
例えば、
- 戦略コンサルで分析力が高い
- 投資銀行で財務モデルを作れる
- 事業会社で新規事業を経験した
- スタートアップが好き
という事実だけでは足りません。
面接では、その経験を使って、どの領域で有望な企業を見つけ、何を見て投資判断し、起業家とどう向き合い、投資後にどんな価値を出せるのかまで接続する必要があります。
見直しポイント1|「スタートアップが好き」で志望動機が止まる
VC志望者に多いのが、
- スタートアップが好き
- 起業家を応援したい
- 日本からユニコーンを生み出したい
- 新しい産業を作りたい
という志望動機です。
方向性として間違いではありませんが、多くの候補者が言えるため、そのままでは差がつきません。
β Venture Capitalは採用ページで、起業家を尊敬し理解しようとすること、市場環境の変化を想像して事業機会を見つけ起業家を探せること、それを他人に説明するため言語化しようとすることを人物像として挙げています。
つまり、「好き」から一歩進み、
- なぜVCという立場なのか
- なぜそのVCなのか
- どんな産業・テーマを見ているのか
- どんな起業家と仕事をしたいのか
- 自分は何を持ち込めるのか
まで話せる必要があります。
見直しポイント2|自分なりの投資仮説がない
キャピタリストは、すでに有名になった企業を評価するだけではありません。将来伸びる市場や企業を早い段階で見つける必要があります。
JAFCOは投資先開拓について、社会課題、ビジネストレンド、技術動向などのマクロ視点と、日常の不便・ニーズなどのミクロ視点から有望な領域を読む仕事だと説明しています。
そのため面接前には、少なくとも一つは、
- 注目する市場
- なぜ今伸びると思うのか
- 顧客の課題
- 競争優位の源泉
- 投資するとしたら何を確認するか
- 最大のリスクは何か
まで整理しておきましょう。
「AIに注目しています」「SaaSは伸びます」では広すぎます。自分なりの仮説と検証ポイントが必要です。
見直しポイント3|起業家を“評価する側”として上から見てしまう
VCは投資家ですが、起業家を審査するだけの仕事ではありません。
JAFCOは求める人物像として、投資先や起業家、ファンド出資者の想いと覚悟を背負い、当事者としてやり抜く姿勢を掲げています。β Venture Capitalも「起業家を尊敬し、理解しようと努めること」を明記しています。
面接で、
- 「この会社はここがダメ」
- 「経営者にこうさせます」
- 「自分のコンサル経験で直せます」
という話し方だけになると、伴走者としての姿勢が見えにくくなります。
改善するなら、
自分ならまず経営者が何を目指しているかを理解し、その上で成長を阻害する要因を一緒に特定する
というように、相手への敬意と自分の仮説を両立させてください。
見直しポイント4|分析はできるが、自分で案件を取りに行くイメージがない
投資銀行、コンサル、リサーチ出身者は分析力を評価されやすい一方、VCではソーシングやネットワーク形成も重要です。
JAFCOでは入社初期に投資先開拓を主要業務として経験し、起業家との対話を重ねることを説明しています。
選考では、
- 初対面の経営者と関係を作れるか
- 自分で情報源を開拓できるか
- イベントや紹介だけに頼らず案件を探せるか
- 特定業界のネットワークを持てるか
という観点も意識しましょう。
「分析を任せてもらえれば強い」だけでは、キャピタリストの仕事を一部しか見ていない印象になります。
見直しポイント5|前職の専門性を“VCでどう使うか”まで翻訳できない
VCへの転職では、全員が同じバックグラウンドを持つ必要はありません。むしろ、事業開発、投資、経営、技術など異なる専門性が強みになります。
β Venture Capitalは歓迎スキルとして、事業開発、ベンチャー投資、事業拡大や組織拡大期のマネジメント経験などを挙げています。JAFCOも近年、投資経験者だけでなく、人事、営業・マーケティング、IPO準備、経営・戦略、IR、海外、テクノロジーなど多様な専門人材を採用していると統合報告書で説明しています。
重要なのは、専門性を「肩書」で終わらせないことです。
投資銀行出身なら
- 財務モデル
- M&A実行
- 経営陣との折衝
を、投資判断や資本政策支援へどう転用するか。
コンサル出身なら
- 市場分析
- 戦略策定
- PM
を、投資仮説や投資先支援へどう転用するか。
事業会社出身なら
- プロダクト
- 営業
- 新規事業
- 組織づくり
を、投資先の成長支援へどう転用するか。
まで言語化します。
若手・未経験層の入り口を比較する場合は、VCは第二新卒でも転職できる?も確認し、募集要件と現在の経験の距離を整理してください。
見直しポイント6|不確実な状況で自分の判断を言い切れない
投資には正解がありません。十分な情報が揃うまで待っていたら、投資機会を逃します。
JAFCOは投資実行で、市場規模、競合、ビジネスモデル、経営チームなどを検証し、事業性の仮説検証と投資条件の検討を繰り返すと説明しています。
面接で投資候補企業を聞かれたとき、
「情報がないので判断できません」
だけで終わるのは避けたいところです。
より良い答えは、
現時点では投資したい。ただし、顧客獲得コストの再現性と主要顧客への依存度は追加確認したい。そこが崩れるなら判断を変える。
というように、暫定判断・根拠・追加検証ポイントをセットで示す形です。
見直しポイント7|「投資後」に関心がない
VC志望者の中には、投資判断やスタートアップ探索ばかりに興味が集中する人がいます。
しかしJAFCOは、投資後のバリューアップとして、営業、採用、会計・財務など投資先のさまざまな課題に関わる主体性を挙げています。
面接では、
- 採用が止まっている投資先をどう支援するか
- 大企業との提携をどう作るか
- 次回調達へ向け何を準備するか
- 組織が急拡大したとき何を見るか
など、投資後の価値提供まで考えてください。
働き方や起業家との伴走の実態を確認したい場合は、キャピタリストの働き方も参考になります。 入社後の成長や次のキャリアまで見たい場合は、ベンチャーキャピタルのキャリアパスも合わせて確認できます。
選考段階別|落ちた場所から原因を切り分ける
不採用になったときは、「自分はVCに向いていない」と一括りにせず、どの段階で落ちたかを分けます。
書類で落ちる
確認する項目:
- VC志望理由が具体的か
- 前職経験がVC業務へ接続されているか
- 成果だけでなく自分の役割が書かれているか
- 応募VCの投資領域と経験が合っているか
未経験から狙う場合は、VCは第二新卒でも転職できる?も参考に、若手向け採用と隣接職種からの接続を分けて検討してください。
一次面接で落ちる
確認する項目:
- 志望動機が一般論ではないか
- 投資したい企業を具体的に話せるか
- スタートアップ市場を自分で追っているか
- 会話が「正解当て」になっていないか
中盤以降で落ちる
確認する項目:
- 投資判断の深さ
- 起業家への向き合い方
- VCごとの投資思想との相性
- 自分の強みをチームでどう生かすか
中盤以降では、投資判断の深さや起業家への向き合い方に加え、応募先が掲げる投資思想やチームとの接続も確認項目として整理します。実際の不採用理由は企業ごとに異なるため、外部から断定はできません。
面接前に作る「VC選考5枚メモ」
1枚目|なぜVCか
金融、コンサル、事業会社ではなくVCである理由を説明します。
2枚目|なぜこのVCか
- 投資ステージ
- 投資領域
- リード/フォロー
- 支援スタイル
- ファンドの特徴
を確認します。
3枚目|投資したい企業2社
1社だけだと話が広がりにくいため、異なるテーマで2社用意します。
4枚目|自分の専門性
「何ができます」ではなく、「投資先のどんな課題で価値を出せます」まで書きます。
5枚目|反対意見への回答
自分の投資仮説に対し、
- 市場が小さいのでは
- 競合が強いのでは
- 解約率が上がるのでは
- 技術優位が続かないのでは
と反論を作り、回答を準備します。
年齢が原因だと決めつけない
不採用になると「年齢で落ちたのでは」と考えがちですが、外部から理由を断定することはできません。
募集によっては年齢ではなく経験・役割・専門性との一致が重要です。年齢面の考え方はキャピタリスト転職の年齢制限で整理し、年齢だけで自己判断しないようにしましょう。
よくある質問
VCの不採用理由は企業から教えてもらえますか?
企業によります。詳細な理由が開示されるかは企業ごとに異なるため、開示がない場合は応募書類、面接内容、募集要件を照らし合わせ、改善仮説を立ててください。
ファイナンス経験がないと落ちますか?
一律ではありません。VCによって採用方針は異なり、事業開発、経営、技術、組織拡大などの経験を評価する例もあります。自分の専門性を投資判断・ソーシング・投資先支援へどう接続するかが重要です。
投資したい会社を聞かれたら上場企業でもよいですか?
質問の意図によりますが、VC選考では応募先の投資ステージや投資対象に近い未上場企業を研究しておくほうが、投資家としての視点を示しやすくなります。
一度落ちたVCへ再応募できますか?
企業の方針によります。再応募する場合は、期間を空けるだけでなく、新しい案件経験、専門性、投資仮説、スタートアップとの接点など、前回から何が変わったかを明確にする必要があります。
まとめ|落ちる理由を「VCの仕事4工程」に戻して点検する
キャピタリスト選考で落ちた理由を整理するときは、
- 投資先を見つける
- 投資判断する
- 投資を実行する
- 投資後の成長とEXITに伴走する
という仕事全体に戻ってください。
自分の強みが、このどこに効くのか。足りない部分をどう補うのか。なぜそのVCでなければならないのか。ここまで説明できれば、選考対策はかなり具体的になります。
自分がどこで評価を落としているのか、どのVCなら経験が合うのかを整理したい場合は、コトラの転職支援へ相談し、非公開求人も含めて応募先と選考対策を確認してみてください。