事業投資の残業は、常に一定ではなく、投資案件のフェーズによって大きく変わりやすいのが特徴です。
通常期は投資候補の調査や既存投資先のモニタリングを計画的に進められても、DD、投資委員会、契約交渉、クロージングが重なる時期には、短期間で業務が集中することがあります。投資後もPMIや業績悪化対応が始まれば別の忙しさが発生します。
したがって「事業投資の平均残業時間は何時間か」という一つの数字だけでは、転職後の働き方を判断できません。
事業投資で残業が増えやすい5つのフェーズ
1. ソーシング・初期検討
案件情報を受けた直後は、
- 市場規模
- 競争環境
- 事業計画
- 財務状況
- 投資仮説
- シナジー
を短期間で整理します。
案件数が多い部署では複数候補を並行して見るため、調査・社内説明資料の作成が重なることがあります。
2. DD
財務、税務、法務、ビジネス、IT、人事などのDDでは、外部専門家から大量の論点が上がります。
事業投資側は「専門家に調査を任せる」だけでなく、その結果が投資判断や価格、契約条件へどう影響するかを統合して判断する必要があります。
3. 投資委員会・社内決裁
総合商社や大企業では、投資規模に応じて複数の会議・決裁を通します。
資料作成だけでなく、経営陣からの質問への回答、事業計画の再検証、リスクシナリオの作り直しなどで作業が増えます。
4. 契約・クロージング
売り手、買い手、金融機関、弁護士、会計士など関係者が増え、期限も固定されます。
契約条件や資金調達、前提条件の充足を同時に進めるため、残業が発生しやすいフェーズです。
5. PMI・投資先支援
投資実行後は、計画どおりに企業価値を上げるフェーズです。
コトラの総合商社の企業投資求人では、投資先企業の開拓・評価・交渉・投資実行に加え、経営改善、事業の企画・開発・運営・管理まで業務に含まれています。
PMIでは、戦略、KPI、組織、人事、ガバナンスなど課題が広がるため、投資前とは違う種類の負荷があります。
「商社の平均残業時間」を事業投資職の平均と考えない
総合商社は人的資本データとして労働時間を開示している企業があります。
たとえば三井物産は、2026年3月期の本店・国内支社勤務の非管理職従業員について、月間平均残業時間を28.4時間と開示しています。
ただし、これは三井物産の事業投資職だけを集計した数字ではありません。対象は本店・国内支社の非管理職従業員であり、部門や職種による差は含まれています。
この数字から「事業投資の残業は月28.4時間」と結論づけることはできません。転職判断では、会社全体の開示を参考にしながら、対象部署の実態を別途確認する必要があります。
法律上の残業上限も確認しておく
一般の労働者について、厚生労働省は時間外労働の上限を原則月45時間・年360時間としています。
臨時的な特別事情があって労使が合意する場合でも、時間外労働は年720時間以内で、時間外労働と休日労働の合計は単月100時間未満・2〜6か月平均80時間以内などの上限があります。
一方、管理職と呼ばれていても、労働基準法上の管理監督者に自動的に該当するわけではありません。転職先での雇用区分と労働時間管理の扱いは確認してください。
事業投資で忙しさを左右する7つの条件
1. 年間の投資件数
チーム人数に対して案件数が多いほど、複数案件が重なる可能性が上がります。
2. 1案件の担当人数
少人数でソーシングからPMIまで持つのか、専門チームで分業するのかで負荷は変わります。
3. 投資対象
国内中堅企業と、海外大型案件では、時差・出張・専門家の数などが違います。
4. 自社勘定かファンドか
投資目的、意思決定、投資期間、LP対応の有無などで業務が変わります。
5. PMIへの関与
投資実行までで終わるのか、投資先へ出向して経営改善まで担うのかで働き方は大きく違います。
6. 社内決裁の重さ
投資委員会までのレビュー回数、リスク部門との調整、経営会議への説明量を確認します。
7. 海外対応
海外投資が多い部署では、時差会議、現地DD、出張が生活リズムへ影響します。
事業投資職への入りやすさと業務負荷を合わせて考えたい場合は、事業投資の転職難易度も参考になります。
面接で確認したい質問
残業時間だけを聞くより、業務構造を聞く方が実態を把握しやすくなります。
- 1人あたり何件の投資案件を並行して担当しますか
- DD開始からクロージングまでの標準的な期間はどの程度ですか
- 投資委員会前のレビューは何段階ありますか
- PMIは投資チームが継続担当しますか
- 投資先への出向や長期滞在はありますか
- 海外案件の比率はどの程度ですか
- 直近1年で最も忙しかった時期はどのフェーズでしたか
- 通常期と繁忙期で働き方はどう変わりますか
こうした質問なら、面接官も具体的な業務を前提に答えやすくなります。
残業が多くても得られる経験があるかで判断する
事業投資は、投資分析だけでなく、経営判断と投資後の事業運営まで学べる仕事です。
一方で、資料作成や社内調整に時間を取られ、投資判断・経営改善へ十分関われない環境もあり得ます。
忙しさを許容するかは、
- ソーシング
- DD
- Valuation
- 投資委員会
- 契約交渉
- PMI
- 経営者との意思決定
のうち、どこを自分が担当できるかとセットで考えてください。
仕事の魅力まで含めて比較したい場合は、事業投資のやりがいも参考になります。
事業投資へ興味はあるものの、今より働き方を悪化させたくない場合は、すぐに応募先を決める必要はありません。コトラの転職支援サービスで、自分の経験で狙える事業投資求人について、案件タイプ、チーム構成、PMI関与、海外比率などを専門コンサルタントに確認し、仕事内容と働き方を一緒に比較してみてください。