事業投資は、投資実務が未経験でも転職できる可能性があります。2026年8月31日時点で、コトラには「事業投資/未経験可」とする募集継続中の求人があり、別の事業会社の企業投資求人でも、新規事業を立案・実行・推進した経験があればM&A業務未経験でも応募対象としています。
ただし、ここでいう「未経験」は、何も関連経験がなくても採用されるという意味ではありません。
事業投資では、投資候補の発掘、事業性評価、財務分析、社内の投資意思決定、契約・エグゼキューション、PMI・投資後支援まで幅広い業務を扱います。そのため企業は、投資経験の代わりになる「事業を見る力」「数字を見る力」「案件を前へ進める力」を探しています。
未経験転職で最初に行うべきことは、「事業投資経験なし」と一括りにせず、自分が投資プロセスのどこまで既に経験しているかを棚卸しすることです。
「事業投資未経験」を3段階に分けて考える
未経験者の難易度は同じではありません。
1. 投資実行だけ未経験
経営企画、新規事業、M&Aアドバイザリー、FAS、戦略コンサルなどで、事業性評価や財務分析、経営層への提案を経験しているケースです。
この層は、契約・投資委員会・株主としてのモニタリングなど未経験部分を補えば、比較的接続しやすい傾向があります。
2. 投資・M&Aは未経験だが、事業づくりの経験がある
新規事業、事業開発、アライアンス、営業企画、プロダクト責任者などの経験者です。
現在のコトラ掲載求人でも、新規事業の立案・実行・推進実績があればM&A業務未経験可とする企業投資ポジションがあります。投資後の成長支援まで行う会社では、事業を実際に動かした経験が評価材料になります。
3. 投資・事業開発・財務分析のいずれも未経験
この場合、事業投資へ直接移る難易度は上がります。
まず経営企画、新規事業、FAS、M&A、法人金融、戦略コンサルなどで、事業・財務・案件推進のいずれかを強くしてから挑戦するルートも検討できます。
転職全体のハードルを整理したい場合は、事業投資の転職難易度も参考になります。
未経験者でも評価される5つの経験
1. 戦略コンサル:事業性を短期間で見抜く力
戦略・経営コンサル出身者は、市場規模、競合、顧客、収益構造、成長戦略を短期間で整理する経験を持っています。
この経験は、投資候補企業のビジネスデューデリジェンスや投資仮説の構築と接続します。
職務経歴書では「戦略案件を担当」だけで終わらず、
- どの市場を分析したか
- どの前提を検証したか
- 経営判断に何を提案したか
- 実行フェーズまで関与したか
を書きましょう。
2. 金融:財務とリスクを読む力
銀行、証券、FAS、M&Aアドバイザリーなどの経験は、財務諸表分析、企業価値評価、資金調達、デューデリジェンス、契約交渉などに接続しやすい領域です。
ただし事業投資では、数字を評価して終わるのではなく、投資後に事業をどう伸ばすかまで考える必要があります。
金融出身者は「分析できる」だけでなく、「事業側の打ち手まで考えた経験」を補うと強みが伝わりやすくなります。
3. 経営企画:投資判断を社内意思決定へ落とす力
経営企画では、中期経営計画、予算、事業ポートフォリオ、取締役会資料、経営会議運営などを経験します。
事業投資では、案件が魅力的でも、社内の投資基準や資本配分方針に合わなければ実行できません。経営陣が判断できる論点へ整理する経験は重要です。
4. 新規事業・事業開発:投資後に事業を動かす力
新規事業の責任者や事業開発経験者は、顧客検証、KPI設計、パートナー開拓、採用、営業、プロダクト改善など、投資後の価値創出に近い実務を持っています。
コトラの企業投資求人でも、新規事業を立案から実行・推進まで担った経験を、M&A経験の代替要件として認める例があります。
5. 法人営業:案件発掘と関係構築の力
投資案件は、公開情報だけで見つかるとは限りません。経営者、金融機関、アドバイザー、業界関係者とのネットワークから生まれるケースもあります。
法人営業経験者は、新規開拓、経営者ヒアリング、複数関係者との調整を「ソーシング能力」として再整理できることがあります。
コトラには、事業会社の営業職から大手商社の事業投資ポジションへ転職した事例も掲載されています。個別事例を一般化はできませんが、営業経験が必ずしも事業投資と無関係ではないことは分かります。
求人票では「未経験可」の後ろを読む
「未経験可」と書かれている求人でも、何が未経験でよいのかは違います。
現在の企業投資求人の一例では、M&A・事業投資経験者に加え、「新規事業の立案・実行・推進までの実績がある人」はM&A業務未経験可としています。そのうえで、財務三表の理解、プロジェクトマネジメント、社内外とのコミュニケーション、投資委員会・経営陣向け資料作成などを求めています。
見るべきポイントは次の通りです。
| 求人票の表現 | 確認すべきこと |
|---|---|
| 投資未経験可 | 財務、M&A、事業開発など何を代替経験として求めるか |
| ポテンシャル採用 | 年齢ではなく、どの能力を将来性として見るか |
| ハンズオン | PMIや投資後支援までどこまで担うか |
| ソーシング | 自分で案件を発掘する責任があるか |
| エグゼキューション | DD、バリュエーション、契約、社内稟議のどこまで担当するか |
「未経験可」という一語より、入社初日から何を任されるかで求人を比較してください。
未経験者が入社前に最低限補いたい知識
財務三表
PLだけでなく、BS・CFまでつながりで理解します。事業の成長が運転資本やキャッシュにどう影響するかを見るためです。
企業価値評価
DCF、類似会社比較、マルチプルなどの考え方を理解します。高度なモデルを独力で作れることが必須とは限りませんが、投資価格を議論する共通言語になります。
M&A・投資プロセス
案件発掘、初期評価、LOI、DD、契約、クロージング、PMIという流れと、それぞれで誰が何を判断するかを理解します。
投資仮説
「良い会社だから投資する」ではなく、
- なぜ今この市場か
- なぜこの会社か
- 何が競争優位か
- どこに最大の下振れリスクがあるか
- 投資後に何を変えれば価値が上がるか
まで考える練習をします。
面接では「未経験です」から始めない
未経験者が面接で避けたいのは、自分の不足だけを強調することです。
「投資は未経験ですが勉強します」では、採用する理由が弱くなります。
代わりに、
- 現職で積んだ経験
- その経験が投資プロセスのどこに使えるか
- 足りない部分をどう補っているか
- なぜ投資後まで責任を持ちたいのか
の順に話します。
たとえばコンサル出身なら、「市場分析ができます」だけでなく、「事業性の仮説構築から経営陣への提案まで経験した。今後は助言で終わらず、投資判断と投資後の価値創出まで責任を持ちたい」とつなげます。
総合商社を含む選考準備では、総合商社の面接対策も確認しておくと、事業理解や志望理由を深めやすくなります。
未経験から転職した後に市場価値を上げる経験
事業投資へ入ること自体をゴールにすると、その後のキャリアが弱くなります。
入社後は、
- 案件ソーシング
- 財務・事業DD
- バリュエーション
- 投資委員会への提案
- 契約交渉
- PMI・モニタリング
- EXIT
のうち、どこまで一気通貫で経験できるかを意識してください。
将来の転職可能性まで見たい場合は、事業投資経験の市場価値で、経験のどの部分がPE・CVC・経営企画・M&Aなどへ接続しやすいかを整理できます。
よくある質問
コンサルから事業投資へ未経験転職できますか?
可能性があります。市場分析、事業DD、戦略策定、経営層への提案などは事業投資と接続しやすい経験です。財務・契約・投資実行が不足している場合は、学習や案件経験で補う必要があります。
銀行員でも事業投資を目指せますか?
法人融資、LBO、企業分析、M&A、ストラクチャードファイナンスなどの経験は強みになり得ます。投資後の事業成長をどう考えるかまで示せると、事業投資との接続が明確になります。
営業職からでも可能ですか?
完全に不可能ではありません。経営者折衝、新規開拓、業界知識などが強みになります。ただし、財務分析や事業性評価を補う必要があります。実際に営業職から大手商社の事業投資へ移ったコトラの転職事例もありますが、個別事例なので同じ結果を保証するものではありません。
事業投資の仕事は魅力的ですが、何を覚悟すべきですか?
投資判断だけでなく、案件が進む局面ではDD・契約・社内稟議が集中し、投資後には事業課題にも向き合います。仕事の魅力と負荷の両面は、事業投資のやりがいや事業投資は激務かも参考にしてください。
まとめ:未経験転職は「投資経験の有無」より代替経験の強さで決まる
事業投資は未経験でも転職可能な求人があります。ただし企業が見ているのは、「投資をやったことがあるか」だけではありません。
戦略コンサルなら事業性評価、金融なら財務・リスク、経営企画なら意思決定、新規事業なら事業推進、法人営業なら案件発掘と関係構築というように、現在の経験を投資プロセスへ翻訳できるかが重要です。
自分の経歴がどの事業投資求人に接続するのか、あるいは一度隣接職種を挟むべきかを具体的に判断したい場合は、コトラの転職支援サービスで総合商社・事業投資・M&A領域に詳しい専門コンサルタントへ相談できます。求人の「未経験可」という表示だけでなく、実際の必須要件との距離を見て応募先を絞り込みましょう。